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今号のトップ 第3回教育に関するアジア・コンファレンス(ACE 2011)に参加して (前) ** 第3回教育に関するアジア・コンファレンス(ACE 2011)に参加して(前) [#h0cb4222] 去る10月27日から10月30日にかけて、第3回教育に関するアジアコンファレンス(ACE 2011)が大阪で開かれ(コンファレンスのURLは[[こちら>http://ace.iafor.org/]])、私自身、発表の機会に恵まれ たので、その発表内容をここに書き綴ってみたい。コンファレンスのテーマは、「グローバル化された世界における教育」というもので、私がこれまで行ってき た義務論的倫理学の探究をどこまで教育という新しいテーマに結びつけられるかが課題であった。発表題目は“The Primacy of the Right over the Good in International Education” (「国際教育における善に対する正の優位」)で、その眼目はグローバル化時代における義務論的倫理学の重要性を訴えることであった。 まず、倫理学の認知上の対立(記述主義と指令主義の対立、またそれに関連して認知主義と反認知主義の対立)について触れ、私の考える指令主義的認知主義の 立場を表明することから始めた。次に、実質的な道徳原理の採用にかんする功利主義と義務論の対立について例を挙げながら詳述し、カントの倫理学を引き合い に出して、義務論的倫理学の特徴は、福と徳の間には内的なつながりはないこと、道徳法則が普遍的な性格をもつことにあると論じた。特に本発表で力を入れた のは、教育というテーマと関連して、功利主義と義務論という倫理学上の古典的根本的対立が、ピアジェの”’Le Jugement Moral Chez L’Enfant”’ (大伴茂による邦訳『児童道徳判断の発達』, M. Gabainによる英訳”’The Moral Judgment of the Child”’)において、二つの道徳性の前者から後者への発達という形で表明されている点であったので、この点について少し詳しく論じてみたい。 ピアジェは子供のおはじきゲームを研究することによって二つの道徳性を摘出し、「大人による道徳的強制」と「対等な者同士の協力」という形で対比させる。 強制というのは一方的な尊敬と結びついていて他律に導くのに対して、他方、協力というのは双方向的な尊敬に基づいていて自律へと導く。ピアジェが強制とい うものを自己中心主義と結びつけているのは奇妙に聞こえるかもしれないが、低年齢の子供は、自分の外に守らなければならない規則があると分かっていながら も、その規則を自分勝手に作っているという意味で自己中心的なのである。例えば、おはじきのゲームでも、低年齢の子供ほど四角の中のおはじきを数多く打つ ことによってゲームに「勝つ」ことを目指すのに対して、年齢が上がってくると対戦相手よりも多くのおはじきを獲得することによって実際にゲームに勝とうと するというわけである。 今号のトップ 第3回教育に関するアジア・コンファレンス(ACE 2011)に参加して (前) ** 第3回教育に関するアジア・コンファレンス(ACE 2011)に参加して(前) [#h0cb4222] 去る10月27日から10月30日にかけて、第3回教育に関するアジアコンファレンス(ACE 2011)が大阪で開かれ(コンファレンスのURLは[[こちら>http://ace.iafor.org/]])、私自身、発表の機会に恵まれ たので、その発表内容をここに書き綴ってみたい。コンファレンスのテーマは、「グローバル化された世界における教育」というもので、私がこれまで行ってき た義務論的倫理学の探究をどこまで教育という新しいテーマに結びつけられるかが課題であった。発表題目は“The Primacy of the Right over the Good in International Education” (「国際教育における善に対する正の優位」)で、その眼目はグローバル化時代における義務論的倫理学の重要性を訴えることであった。 まず、倫理学の認知上の対立(記述主義と指令主義の対立、またそれに関連して認知主義と反認知主義の対立)について触れ、私の考える指令主義的認知主義の 立場を表明することから始めた。次に、実質的な道徳原理の採用にかんする功利主義と義務論の対立について例を挙げながら詳述し、カントの倫理学を引き合い に出して、義務論的倫理学の特徴は、福と徳の間には内的なつながりはないこと、道徳法則が普遍的な性格をもつことにあると論じた。特に本発表で力を入れた のは、教育というテーマと関連して、功利主義と義務論という倫理学上の古典的根本的対立が、ピアジェの”’Le Jugement Moral Chez L’Enfant”’ (大伴茂による邦訳『児童道徳判断の発達』, M. Gabainによる英訳”’The Moral Judgment of the Child”’)において、二つの道徳性の前者から後者への発達という形で表明されている点であったので、この点について少し詳しく論じてみたい。 ピアジェは子供のおはじきゲームを研究することによって二つの道徳性を摘出し、「大人による道徳的強制」と「対等な者同士の協力」という形で対比させる。 強制というのは一方的な尊敬と結びついていて他律に導くのに対して、他方、協力というのは双方向的な尊敬に基づいていて自律へと導く。ピアジェが強制とい うものを自己中心主義と結びつけているのは奇妙に聞こえるかもしれないが、低年齢の子供は、自分の外に守らなければならない規則があると分かっていながら も、その規則を自分勝手に作っているという意味で自己中心的なのである。例えば、おはじきのゲームでも、低年齢の子供ほど四角の中のおはじきを数多く打つ ことによってゲームに「勝つ」ことを目指すのに対して、年齢が上がってくると対戦相手よりも多くのおはじきを獲得することによって実際にゲームに勝とうと するというわけである。
更新情報(Update) 2011年 ・12月18日:トップ・ページに「日々雑感」(第3回教育に関するアジア・コンファレンス(ACE 2011)に参加して(後))を掲載しました。 ・11月30日:トップ・ページに「日々雑感」(第3回教育に関するアジア・コンファレンス(ACE 2011)に参加して(前))を掲載しました。 ・9月23日: 「日々雑感」(アリストテレスの自然哲学の特徴)を掲載しました。 ・8月1日: 原典講読〔アリストテレス『自然学』(第3回)〕を公開しました。更新情報(Update) 2011年 ・12月18日:トップ・ページに「日々雑感」(第3回教育に関するアジア・コンファレンス(ACE 2011)に参加して(後))を掲載しました。 ・11月30日:トップ・ページに「日々雑感」(第3回教育に関するアジア・コンファレンス(ACE 2011)に参加して(前))を掲載しました。 ・9月23日: 「日々雑感」(アリストテレスの自然哲学の特徴)を掲載しました。 ・8月1日: 原典講読〔アリストテレス『自然学』(第3回)〕を公開しました。 ・7月1日: 原典講読〔アリストテレス『自然学』(第2回)〕を公開しました。 ・5月22日: 学際研究セミナーに新刊情報『Problems about the Axiom of Choice』(Author-Wataru Asanuma)を掲載しました。 ・4月8日: 原典講読〔アリストテレス『自然学』(第1回)〕を公開しました。 ・4月1日: トップ・ページに設立の趣旨を設置しました。
歴史文化学際研究センター Center for Interdisciplinary Research in History and Culture(Cirhc) - このウェブサイトは,2011(平成23)年4月,歴史文化学際研究センターの設立と同時に開設しました。研究センター設立の趣旨については,[[こちらで閲覧>設立の趣旨]]できます。 - ロゴマーク Cirhc★は,歴史文化学際研究センター(CIRHC) の今後の展開への夢を託したものです。